掲載日:2020.5.28
4月7日に指定されて約一か月半、兵庫県でも、5月21日に緊急事態宣言対象区域(特定警戒都道府県)から解除されました。まだ油断ができない状況下ではありますが、皆様の生活が少しずつ元の日常に戻ることを切に願うばかりです。
さて、このところ、とても気持ちの良い晴れた日が続いています。今回は「六甲山・摩耶山を舞台にしたショートストーリーコンテスト(主催:六甲摩耶観光推進協議会)」の受賞作品をご紹介いたします。
昨年の11月1日より募集受付を開始した当コンテストは、六甲山・摩耶山の魅力発信を目的にしたコンテストです。全国から多数の応募があり、厳正なる審査の上、大賞作品、入賞作品が決定しています。
六甲山、摩耶山といえばなんといっても山上からの美しい景色が有名ですが、四季折々の豊かな自然や歴史を体感しながらのハイキングも大変魅力で、地元神戸の方々も年間通して山歩きを楽しまれています。
ショートストーリーコンテストの大賞作品『ナツツバキの径(みち)』(二十 渉さん著)は、摩耶山の登山道を舞台にした作品です。
物語の主人公・沙絵は神戸出身の三十代。中途入社した地元企業の新人研修で摩耶山にあるホテルを訪れた後、一人で新神戸駅まで徒歩で下山します。小学生のときに父親に連れてきてもらったときのことを回想しながら、摩耶山上から新神戸駅までの登山道を歩きます。タイトルにも入っている「ナツツバキ」はその名の通りツバキに似た花で、摩耶山では6月から7月にかけて目にすることができる花です。
沙絵は懐かしい父との思い出を振り返りながら、父親が教えてくれたナツツバキの花が咲く場所を探します。1日しか花を咲かせない白く小さな花は儚げで美しく、寺院などの庭にもよく植えられているので目にしたことがある方もいらっしゃるかもしれません。摩耶山の山頂近くにある摩耶山天上寺でもナツツバキを見ることができます。そして境内のシンボル、ヤマボウシも6月に見頃を迎え、白く色づいたヤマボウシの大木も圧巻です。
ところで作中でナツツバキが咲いているのは通称『徳川道』と呼ばれる道です。名前からも分かるように、徳川家康の命を受けて作られた道なのですが、実際には使われることのなかった幻のバイパスとしても有名です。というのも、江戸時代に参勤交代で使われていた「西国街道」という道は幕末に開港した兵庫港にほど近く、徳川道は外国人と大名行列との衝突を避けるために作られた「西国街道」の迂回道だったのです。
しかしながら、徳川道、すなわち西国往還付替道は、完成した直後に明治新政府が発足して参勤交代が廃止されたことから、一度も使われることないまま廃れていきました。
その後摩耶山の登山道として再整備され、「徳川道」として親しまれています。
大賞作品『ナツツバキの径(みち)』の全文はこちらからお読みいただけますので、ぜひチェックしてみてください。
(https://www.feel-kobe.jp/uploads/nanatsubakinomichi.pdf)
摩耶山の自然や歴史を身近に感じることができますよ。
他の入賞作品も公開中です。
●『サンダー、うそだー』 桑嶋 ミキトさん著
https://www.feel-kobe.jp/uploads/sanda-usoda-.pdf
占い師の主人公女性のもとに現れた不思議な男。名字だけを明かした忌部と名乗る男に連れられ京都から六甲ガーデンテラスへと向かう。軽妙な会話調で進むストーリーに引き込まれる。
●『エゾゼミのなく森で』 嶋田 隆之さん著
https://www.feel-kobe.jp/uploads/ezozeminonakumoride.pdf
まやビューラインを使って摩耶山上へ。自然観察園へ向かう道中、かつての恋人とオルゴールミュージアムに訪れた思い出が頭によぎる。切なさに襲われ帰路につこうとする主人公の視界に入ってきたのは・・・。
●『父と子の摩耶登山』 桜井 明日香さん著
https://www.feel-kobe.jp/uploads/chichitokonomayatozan.pdf
夏休み、暇を持て余していた小学五年生の主人公は、お父さんに誘われて摩耶山へキャンプに行く。掬星台のそばでテントを張り、食事を作る父子の様子が微笑ましい。
●『もう一度』 片山 ひとみさん著
https://www.feel-kobe.jp/uploads/mouichido.pdf
昔両親が訪れた六甲山、摩耶山に、進路に悩む高校生の主人公・沙奈が親子三人で訪れる。六甲山牧場の雄大な自然、六甲オルゴールミュージアムで聞く美しいオルゴールの音色。偶然出会った先輩との会話の末沙奈が決断した進路とは・・・。
●『六幸の山』 井川 一太郎さん著
https://www.feel-kobe.jp/uploads/rokkonoyama.pdf
消息不明になった伯父を探しに東京からはるばる六甲山へと来た直人。直人と共に捜索を依頼されてやって来た春香は、神戸出身の快活な女性だった。六甲の美しい自然に包まれて捜索を進めるうち、伯父が言っていた「六甲が六つの幸せの山」の意味に気づく。